『The Power Station』は、1985年に結成されたプロジェクト・グループ、「パワー・ステーション (The Power Station)」の最初のスタジオ・アルバム。バンド名はアルバムのレコーディングで使用した有名なザ・パワー・ステーション・スタジオに由来している。
デュラン・デュランのアンディ・テイラーが彼の憧れであったロバート・パーマーに声をかけたことから誕生したバンド。1stアルバム収録曲の「Harvest For The World」 (アイズレー・ブラザーズのカバー) では、ロバートとアンディのボーカルが交互に聞ける。
このパワー・ステーションが驚きを持って迎えられたのは、デュラン・デュランの活動範囲から考えられない知る人ぞ知る“いぶし銀”なロバート・パーマーと黒人ファンクバンドのシックというメンバーの組み合わせにある。
1981年デビューのジョン・テイラーにとって70年代から活動しているロバート・パーマーはアイドルであり、デビュー後からは知り合いともなった間柄。ジョン・テイラーはロバート・パーマ-に度々、後にアルバム『THE POWER STATION』の核となる曲で、T-REXの「GET IT ON」をデュラン・デュランのサウンドとは違うかたちでカバーしたいと話していた。ロバート・パーマーとシックの間はそれこそ関係はないものの、この頃は“シックのギタリスト”というよりも“売れっ子サウンド・プロデューサー”として名を馳せていたナイル・ロジャースはデュラン・デュランの幾つかの曲もプロデュースしている。つまり、デュラン・デュランのジョン・テイラーを中心にこの意外な組み合わせのメンバーが集まった。そして、デュラン・デュランの世界的人気がピークを指した1984年夏、いよいよ始動した。
ただ、当初の構想はかなり違うものだった。ジョン・テイラーとアンディ・テイラーは固定しての、ロバート・パーマーひとりだけではなく、複数のボーカリストを招いたプロジェクトであったのだ。最初のセッションで、ロバート・パーマーのハマり具合にいたく感動したジョン・テイラーはそのまま彼に全曲のヴォーカルを依頼。それから、最初にプロデュースを依頼したのは、デュラン・デュランの代表曲となる「THE REFLEX」シングルバージョンのリミックスと「THE WILD BOYS」のプロデュースを担当したことのある、前述したナイル・ロジャースであった。しかし、当時のナイル・ロジャースは超売れっ子。ボーカリストも定まっていないようなゼロからに近いプロジェクトには時間を割くことは適わず、代わりに同じシックのメンバーであるバーナード・エドワーズに廻ってくる。そして、メンバーの人選においてこれだけは当初の構想通りとなったシックのドラムであるトニー・トンプソンを入れてのスタートとなった。
バーナード・エドワーズを迎えていることからリズムセクションは特に素晴らしい仕上がりとなっている。もともとバンドは単発のユニットして結成されたが、あまりにも上手くいくすぎ、デュラン・デュランの二人ががツアーも行いたいと言い出したが、ソロではアメリカでの成功に恵まれなかったロバートは、パワー・ステーションの成功に引き続いてソロアルバムの製作を優先し、ツアー参加は固辞した。やむなく代役として元シルヴァーヘッドのマイケル・デ・バレスを起用してツアーを行い、1985年のライブエイドにも参加した。この日ジョンとアンディはデュラン・デュランでも演奏した。
リズムはこの時代に流行ったゲートのかかったドラム・サウンドで、トニー・トンプソンだけに非常にタイトで実にカッコイイ。さらにギターのアンディーは明らかにデュラン・デュランより渋いギターを弾いていて実に玄人好みのもの。そして最も有名にしたのはT-REXの名曲、”Get It On”を収録したことである。原曲も実にカッコイイのだがパワステ・ヴァージョンも引けをとらない。CHICが好きなファンクな人にも、デュラン・デュランが好きなPOP好きな人にも、THE POWER STATIONは両方のジャンルに受け入れられるバンドともいえる。全米でもしっかりチャートに乗っている。
1996年に再結成したが、ジョン・テイラー抜きでの再結成となり、ベーシストは1枚目のアルバム時にプロデュースを担当したシックのバーナード・エドワーズだった。このメンバーで渋谷公会堂などでの来日公演を行っている。