『1984』は、アメリカのハードロック・バンド、ヴァン・ヘイレン(Van Halen)が1984年に発表したアルバム。通算6作目。アルバム・ジャケットでは、ローマ数字でMCMLXXXIVと記載されている。本作を最後に、初代ヴォーカリストのデイヴィッド・リー・ロス(David Lee Roth)が一度脱退した。
エドワード・ヴァン・ヘイレンがキーボードを多用し、「ジャンプ」ではギター・ソロとキーボード・ソロの両方をエディが演奏した。「1984」は、キーボード演奏によるインストゥルメンタルで、「ウェイト」もキーボード中心のバッキングとなっている。
発売から2か月で100万枚を突破し、Billboard 200では、マイケル・ジャクソンの『スリラー』に次ぐ、自身最高位の2位を記録。最終的には1,000万枚以上を売り上げ、ダイアモンド・ディスクに認定された。
第1弾シングル「ジャンプ」は、自身初のBillboard Hot 100における1位獲得曲となった。他に「ウェイト」(全米13位)、「パナマ」(全米13位)、「ホット・フォー・ティーチャー」(全米56位)もシングル・ヒット。なかでもシンセのイントロが耳に残る『ジャンプ』は、5週にわたって第1位を記録し、そのビデオクリップは第1回ビデオミュージックアワーズの最優秀パフォーマンスビデオ賞を受賞するというおまけもついた。メンバーにしてみれば、制作過程において既に手ごたえがあったと語っているだけに、それほど驚く結果ではなかったようだ。
順風満帆に見える裏で、バンド内には修復不可能な亀裂が生じていた。常に音楽的探求心を追求し、シンセサイザーの本格的導入を試みようというエディと、「我々はギターを武器として闘っていくべき」と主張するデイヴが対立。それまでも鍵盤楽器やそれを彷彿させるギターエフェクトは楽曲の一部で導入されてきたが、ここまでポップ色を強く感じさせるサウンドは初めてだった。デイヴは2年以上に渡り「Jump」の歌詞を書くことを拒否。この対立は後々まで尾を引き、デイヴは1985年にソロアルバム『Crazy From The Heat』をリリースし、脱退を発表。“音楽的価値観の相違”と言えばそうなのだが、バンド史上最大のヒット曲がバンドの内部分裂を促したのだから皮肉なものだ。