『ディキシー・チキン』(Dixie Chicken)は、アメリカのロックバンド、「リトル・フィート」(Little Feat)が1973年にリリースした、3枚目のアルバム。リトル・フィートの代表的名盤とされる。
リトル・フィートは、ニューオーリンズR&B、ブルース、カントリー、ジャズなど、アメリカン・ルーツ・ミュージックの影響を色濃く押し出しているサウンドが特長。解散・再結成を経て、1969年結成以来50年以上経った現在も活動。
本作は、録音は1972年、ロサンゼルスのクローヴァー・レコーダーズ、ワーナー・ブラザース・レコーディング・スタジオ、サンセット・サウンドなどで行われた。プロデューサーはローウェル・ジョージ。
ボニー・プラムレット、ボニー・レイット、ダニー・ハットン、グロリア・ジョーンズらがバッキング・ボーカルで参加している。アルバムのタイトルのディキシー(あるいはディクシー)というのは、米国南部を意味するが、語源もはっきりせず、その定義も曖昧である。主としてニューオーリンズの音楽要素を取り込んでの演奏を繰り広げているが、不思議な事に、南部っぽい要素を持ちつつも、必ずしも典型的な南部音楽に仕上がっているわけではない点である。それは、ディープ・サウスだけではない彼らの様々なルーツが既に存在し、それらが混ざり合いながら、混沌とした中で本作では南部音楽へのアプローチという形態をとっている所に理由がありそうだ。
この“いびつさ”がそのままリトル・フィートの良さにつながった。ただし、このグループが万人に好まれるビッグ・ネームとして君臨しなかったのも、同時にこの“いびつさ”によるのであろう。結果的に、リトル・フィートは、とっつきにくいが、はまる人が多いという、いわば“玄人受けする”アーティストとなった。
タイトでファンキーにローウェル・ジョージのスライド・ギターが冴えわたる。ファンキーな味わいと、どこか泥臭くないプラスティックな感覚(ネオン・パークによるジャケットもその感覚を強めている)という相反する要素が、がっぷり組み合わさってリトル・フィート独自のスタイルが描き出されている。