David Sylvian – Dead Bees On A Cake

David Sylvian - Dead Bees On A Cake

Dead Bees On A Cake』は、元イギリスのロックバンド「ジャパン」のボーカリスト、デヴィッド・シルヴィアン(David Sylvian)の4作目のスタジオ・ソロアルバム(途中の実験的なアルバム、『Alchemy: An Index of Possibilities 』を加えると、5枚目)。1999年のリリース。
前作、『Secrets of the Beehive』以来12年ぶりのソロアルバムとなった。
この前作『Secrets of the Beehive』が一つの到達点を感じさせる仕上がりだったのもあり、以降はコラボレーション活動も多く、また結婚や引越、子供が生まれるなど、私生活の変化も大きく、ソロ作品としてリリースされるのは長い年月を経ての事となった。

本作は、作品として出来上がるまで、かなりの試行錯誤があった。当初は坂本龍一とのコラボレーション、プロジェクトを進めていたが、どうにも満足の行くものにならず、途中で断念。
その後も、他のアーティストとセッションを進めるものの、満足できるものにはならなかった。
結局は、基本的に手持ちの素材をサンプリングし、アレンジを再構築してアルバム制作の土台を作ろうとした。単独プロデューサー、エンジニアリング担当、メンテナンス担当、自分のスタジオなど、クリエイティブでレコーディングするという基本的な仕事に取り掛かり、彼は多数のパフォーマンスからさまざまなサンプルを使って作品を再構築した。本当に難しかったのは、全体を非常に有機的に感じさせること。まるでグループで演奏しているかのように、音響的にも全体の一部のように聞こえるようにすることだった。これは実際かなり難しかった。おそらくアレンジを実際にまとめることよりも大きな難題だったと言う。

その苦渋の中で作品として生み出された本アルバム。前作で高みに登った世界観・音楽感を更にアンビエントにスピリチャルに有機的に纏め上げ、かつ彼の独特のヴォーカルワークも厚みを増している印象。
シルヴィアンの音楽はしばしばジャンルを超越した音作りが特徴的だが、このアルバムでもアート・ロック、アンビエント、ワールドミュージックなど、多様な音楽スタイルが融合され、その特徴が顕著に表れている。
アルバム全体を通して、宗教的、精神的なテーマが強調されており、禅やヒンドゥー教など東洋の宗教や哲学から受けた影響や要素が歌詞や音楽に色濃く反映されている。
歌詞は非常に詩的であり、彼の内省的な視点や人生の探求が反映されてるものとなっている。
また、ジャズ・トランペッターのケニー・ホイーラー、ギタリストのビル・フリゼール、インドの伝統音楽家タブラ奏者のタラナス・サンドゥーなど、多くの著名なミュージシャンが参加している。

全体的に前作で築いた世界観を押し広げ深みを持たせた印象であり、すっと心に深く入りこませる、静かで美しい独特の雰囲気と感情、空気感にあふれている。
批評家やファンからは高い評価を受けており、シルヴィアンの深い音楽的探求とその芸術的なビジョンを示した重要なアルバム。

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